漫画の読解力の差を解説|馬鹿でも読めるけど教養があるとより楽しめるのがマンガ

漫画の読解力には大きな個人差があり、読解力や教養レベルの違いによって、同じ漫画作品でも読者によって読み取れる情報量や理解度が大きく異なる。読解力を初級、中級、上級の3段階に分類し、それぞれの読解力レベルの特徴と読み方の違いを詳説。

漫画作品ごとに求められる読解力の難易度も様々で、読解力が高く教養豊かな読者ほど、漫画の奥深さを堪能できる。一方で、読解力の低い読者でも楽しめるように設計された漫画作品も存在し、それが「漫画ばかり読むと馬鹿になる」という言葉の背景にあると推察される。

読解力と教養を身につければ、きっと自分好みの面白い漫画に出会えるはずだ。

目次

漫画の読解力で見えている情報が違う

そもそも漫画に読解力の差なんてあるのか?という話ですが「確実にある」と言えます。

例えば、美術やアート作品を楽しむためにはそれなりの知識や教養が必要です。美術・音楽・アートに全く興味が無い人が作品を見ても「何がいいのかさっぱりわからない」みたいなことはよくあります。

これは同じ作品を見たり聴いたりしていても、 受け手のレベルによって受信できる情報に差があるからです。「難易度が高い作品を楽しむためには教養が必要」なのと同じように、漫画も教養がある人の方がより深く楽しめます。

しかし、漫画のすごいところは「教養がない人でも教養が無いなりに楽しめてしまう」ことです。

極端な例を出すと、日本語が読めない人が日本の漫画を見たとして「吹き出しのセリフが全くわからなくても、 キャラの動きや表情でなんとなくストーリーがわかる」し、仮にストーリーがわからなくても「キャラが好き」だけで楽しめてしまうのが漫画。

でも、セリフを読めた方がもっと楽しめるよねという感じです。

このように受け手のレベルによって受け取れる情報量に差があるのは確実です。

「日本語が読めない」というのは極端が例ですが、実際のところは「同じ日本人であっても日本語の読解力には差があるし絵を見る能力にも差がある」という話。同じ日本語圏で生まれた日本人であっても、想像以上に漫画の読解力や教養による読み取り方の差が大きいです。

この辺が漫画談義の会話が成り立たなかったり、他人の評価がな特できなかったりすることの説明になりますので、具体的に読解力の差について説明していきます。

漫画の読解力を3段階にわける

漫画の読解力をわかりやすいようにざっくり3段階に分けます。

読解力の段階
  • 初級:漫画に描いてあることを部分的に理解できる
  • 中級:漫画に描いてあることを全体的に理解できる
  • 上級:漫画に描いていないことを理解できる

漫画読解力:初級

対象者

小中学生、漫画を読まない大人、教養レベルが低い大人。いわゆる日本語が読めない人(Twitterの140文字を正しく読めない人)。

初級の説明

  • 漫画を部分的にしか読めていない
  • 読めるところだけ読むような見方
  • 表面的な部分だけ読み取りがち
食事に例えると

牛肉と豚肉の違いがわからずどちらも肉としか認識できていない。食べ放題の安い肉とA5の肉の違いがわからない。

漫画は、セリフの意味がよくわからなくてもキャラの表情を見ただけでなんとなく意味はわかるしその逆もしかり。また、作者の真意を読み取れず誤った受け取り方をしても それでも漫画は読み進められるようにできている

そのため、本人は「ちゃんと漫画が読めている」 と錯覚している人が多いと思う。

読解力が初級レベルの人の漫画批評は的外れな批判になりがち。

漫画の見方例

異世界転生モノの作品がここ10年で流行っていて無数の作品が生まれたました。しかし、作者には申し訳ないが一部の作品を除いてほとんどの作品は有象無象。

ちゃんとエンタメ作品として評価されるものは『無職転生』『転生したらスライムだった件』『盾の勇者』など一部。

しかし、読解力初級の人は『無職転生』と他の『有象無象の異世界転生モノ』とが同じに見えている。

「異世界転生モノ」という表面的な情報しか受け取れていないから。

食事に例えると

メインの肉料理だけを食べてコース料理を美味い不味いと評価する。咀嚼力が無いので汁物や柔らかくて食べやすい品だけかいつまんで食べて会席料理全体の批評をしている。

漫画読解力:中級

対象者

高校生以上で最低限の国語力・観察力・思考力などが身についている人。いわゆる日本語が読める人(Twitterの140文字を正しく読める人)。

中級の説明

  • 一通り漫画に描いてあること(絵・セリフ・説明)を読み取れている人
  • 大人でも中級の読解力を持っていない人は大勢いる
  • 日本人の半分くらいは中級に到達できてない(たぶん)
食事に例えると

牛肉・豚肉・鶏肉の違いがちゃんとわかる人。出された品・コース料理を全部食べられる人。

漫画の見方例

書いてあるセリフや説明が全部読めるのは当然で、加えて絵も理解できている。

「セリフはこう書いてあるけど、こういう表情をしているから、こういう意味での発言だな」と理解できる。「セリフは書いてないけど表情や仕草からこういうことを考えているんだな」と読める。

文脈が理解できると言っても良いかも。

食事に例えると

コース料理なら、それぞれ食前酒・前菜・メイン・デザートだなと理解して食べれる。会席料理なら、前菜・汁・向付け・ご飯・香の物・デザートとか理解して9品とか11品とかを食べれる。要はメニューに書いてある内容を全部咀嚼して飲み込める。

最低限中級以上の読解力がないと漫画作品を批評できない(面白い面白くないと言える立場にはない)と思ってます。

漫画読解力:上級

対象者

  • 漫画に描いてないことを読める
  • 考察などを楽しめる
  • 肌感覚で日本人の上位2割くらい
  • ここから先はどの方向にどれだけ深く・広く漫画を見るか人それぞれ

「漫画に描いてないことを読める」とはどういうことか

例:伏線

「これが伏線です」とか「これが回収です」とかは漫画に描かれていない。話を越えて自分の頭の中で複数の情報を結びつけられる人にしか伏線は理解できない。「1話のアレが10話のコレか」とリンクできて初めて伏線になる。

例:作者や制作現場を想像

時事ネタを入れてきてるなとか、こういうネタが多いから作者はこんな趣味や思想を持ってそうだなとか、この作者メカの書き込みこだわりあるなとか、アニメならこの声優はあのキャラと同じだなとか。

例:他の作品との関連

これはあの作品のオマージュだなとか、あの漫画に影響を受けてる絵だなとか。

例:時間経過

1巻と最終巻だと表現や画力が変わってるなとか、現実の時間(話数)と漫画内の時間の流れのギャップで「ここ飛ばしてるな」とか「ここは深く掘り下げて描いてるな」とか。

上級の読み方をするためには漫画に対する知識・一般教養・人生経験が必要。

だから漫画を深く読むには教養がいるし、漫画を楽しめない人は教養が無い(情報を読み取れてないだけ)とさえ思ってます。

食事に例えると
  • この食材を仕入れるとはやりおるなとか
  • この食材があるタイミングでこれて運がいいなとか
  • この時期だからこの食材使ってるんだなとか
  • この場所だからこの食材がこの値段で出せるのかなとか
  • この食材はこういう料理にも使えるんだなという気づきとか

つまり料理のメニューに書いてないことに気づいて楽しめるかどうか。

漫画作品によって読者に求める読解力が違う

「漫画の読解力には差がある」ことを踏まえて、今度は漫画作品によって求められる読解力に差があることを説明。

例:初級~上級読者まで網羅した作品

『ハンターハンター』

小中学生でもついてこれる表現を使ってるけど実際のとろストーリーや設定がめちゃくちゃ深い。わかるところだけ見ても(初級でも)面白いけど、ちゃんと理解するためには上級以上の読解力が求められる。

このような作品は、小中学生のときに読んだ人が数年後に読み返すと全く違う情報が読み取れるはず。子供(初級)も大人(上級)も楽しめる作品。

食事に例えると

大人の味だけで出来てる会席料理ではなく、子供でも楽しめるメニューも配置されている感じ。もしくは、見た目はお子様ランチだけど全ての料理が超本格高級料理でてきている。

例:中級以上の読解力を必要とする作品

『無職転生』

  • 初級が見ると有象無象の異世界転生モノと同じに見え評価が低い
  • 中級で他の異世界転生モノと違うなとわかる
  • 上級の読解力があると「これすげぇな」とわかる

だから無職転生に低評価レビューつけている人はだいたい読解力が低くて他の異世界転生モノと区別がついてない人たちが大半だと思う。

食事に例えると

高級なお吸い物とか京都のおばんざいみたいに見た目が地味でわかりやすい美味しさがない。ハンバーグやカレーが好きな小学生には不人気。舌が肥えた人間が食べると「いい出汁使ってんな」とか「こんなに薄味なのに美味しくつくる技術がすごい」とわかる。

例:中上級の読解力を必要としない作品

『漫画アプリで大量にばらまかれてる作品』
『有象無象の異世界転生モノ』

「能力バトルかっこいい」「美少女かわいい」以上です。みたいな作品。

上級の読解力を有している人間からすると考察したり思考を巡らせて読み解く余地がないからつまらない。

ただ、最近ではこういう作品が漫画アプリでランキング上位に入っている。理由は小中学生票が多いからだと考える。漫画アプリの利用者に限定すると、日本全体と比較して読解力初級者の割合が多そう。

「ランキング上位=面白い」にはならない理由。

食事に例えると

ジャンクフードやファーストフード。例えばマクドナルド・ポテチ・カップラーメンなど。食べられるけど食事を楽しむような食べ方はしないし、食べて感動はない。それに関して人と語り合ったりしない。お金や時間をかけてまでわざわざそれを選ばない。

「漫画ばかり読むと馬鹿になる」への回答

昔言われた「漫画ばかり読むと馬鹿になる」は、「初級の読解力しか必要としない漫画作品の存在」と「初級の読解力しかない人間でも楽しめるように設計された作品」によるものだと思います。

当時の漫画を読まない大人にとっては上級レベルの漫画の読み解き方が存在することが想像できなかったんでしょう。

「漫画を読むと馬鹿になる」なんてことはありませんが、馬鹿が馬鹿のままでも読めるように作られているのが漫画のすごいところである一方、本当に漫画を楽しもうとするのであれば作品に合わせて読解力や教養レベルを上げて頭良くしないといけません。

漫画をどう見るか、結局は本人次第ですね。

読解力・教養があったほうがより漫画は楽しめる

読解力上級者の漫画談義や発言内容に対して、読解力初級の人が的ハズレな意見を言っているのが気になります。

例えば「そんな見方してたら楽しめない」「言いがかりをつけるな」「作り話するな」など。

上級の読解力を持つ人たちは、漫画を批評したり分析したりして楽しんでいる面もあるわけで、その中で批判的な意見も当然出てきます。

  • 矛盾してる
  • 作画崩壊してる
  • 話に整合性が取れてない など

これを読解力初級の人が見ると「重箱の隅をつついて批判している」ように見えるらしいです。

これは大きな間違いで、批判したくてあら捜しをしているわけでなく「読解力初級の人では見えない・気づけないもの」が見えている人もいるってだけです。

読解力が高いがゆえに見えてしまうアラも当然あるけど、それ以上に読解力が低い人間では味わえない漫画の楽しみ方ができているのが実際のところ。

例えば、電車に乗って駅弁を食べたときに何食べても「うまいっ!」って言うだけの人もいれば、今電車が走っている地域と時期で採れる食材が駅弁に入ってることに気づいて楽しめてる人もいるってことです。

その副作用として、「一部特産物ではない食材も弁当に入ってるな」と気づいてしまうようなものです。

それを食に関する知識や教養がない人間が「弁当の食材なんか気にせずだまって食え」と批判するのはナンセンスだと思ってます。

「下手に知識や教養が無い方が作品の粗が見えなくて幸せ」というケースもあるかもしれません。舌が馬鹿だと何食っても美味いみたいな。

けど、せっかく作者が魂込めて作った作品なんだから、 その作品の隅々まで読み解いて、更に作品に描かれていない背景なんかまで楽しめた方がお得だと個人的に思います。

まとめ:漫画は面白い

もし、漫画の読解力が初級~中級レベルにも関わらず「漫画全般が面白くない」と感じている人はもったいないです。つまり面白さを感じるだけの教養・読解力が足りていないだけだから。

これだけ膨大な量の作品があるにも関わらず、自分の好みに合う漫画が存在しないなんてなかなか考えづらいです。

読解力があってちゃんと漫画で表現されていることが読み取れるのであれば「この漫画は面白い」「これは好き」と思えるものが絶対にあると思ってます。

だから「漫画は面白くない」と言ってる人は、漫画の面白さを理解するだけの読解力がない・教養がない人間だと思ってしまうくらいです。

ということで、漫画って面白いよねという話でした。

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