生活保護職——市場原理では存在しない、税金で養われている職業の定義と一覧

あなたの給料から毎月天引きされている社会保険料。その行き先を辿ると、市場原理のもとでは存在しえない職業が大量に見つかる。国民医療費48兆円の88%、介護給付費12兆円の90%、私学助成の累計13兆円——これらは制度によって需要を水増しされた結果として存在し、制度が消えれば淘汰される職域を支えている。

本記事では、この構造を「生活保護職」という概念で定義し、医療・介護福祉・教育を中心に該当する職業・職域を一覧化する。

なお、各職業・職域の評価は、後述する定義と判定基準に基づき、公的統計・海外比較データをAI(Claude)に入力して分析・分類させたものである。データの収集は客観的に行い、評価には自由主義の立場を明示している。


目次

生活保護職とは何か

生活保護職とは、制度によって需要が水増しされた結果として存在する職域のうち、その存在が国民の資源を不本意に奪い、相応の恩恵を還元せず、国益を損なっているもの、およびその職域に依存する就労者のことである。

この定義には二つの条件がある。

一つ目は制度依存。市場原理のもとでは淘汰される職域であり、制度(社会主義的手法)による需要の水増しがなければ成立しない。

二つ目は有害性。国民が望まない形で資源(税金・社会保険料)を奪われ、その対価としての恩恵がなく、結果として国益を損なっている。

この二つが揃って初めて生活保護職に該当する。片方だけでは該当しない。制度に依存していても、国民が「この費用は払う価値がある」と受容しうるものは生活保護職ではない。自衛隊は平時には「生産性」が見えにくいが、国家の存続に直結する機能を持っている。林業は補助金なしでは採算が合わないが、国土の67%を占める森林の管理を放棄すれば土砂災害リスクが不可逆的に上昇する。こうした職域は制度依存であっても、経済では測定しがたい価値(国防・国土保全・社会秩序の維持・生命の保全など)を有するため、生活保護職には含まない。

逆に、有害でも市場で自立している事業はただの悪い企業であって、制度の構造問題ではない。

生活保護職」という命名には意味がある。制度的に保護されている構造は生活保護と同じだ。しかし生活保護の受給者は自分が保護されていることを知っている。生活保護職に就いている人間は知らない。むしろ「社会に貢献している」と思っている。その無自覚さのもとで制度の拡大を要求し、国民の資源を奪い続ける。生活保護受給者は他者に害を与えていないが、生活保護職は無自覚ゆえに制度の拡大圧力を生む点で、生活保護受給者より有害性が高い。この二重の皮肉が、この名前に込められている。

📕 制度と利権の構造を一般向けに解説


判定基準——何をもって生活保護職と判断するか

需要の水増し度合い

市場が自然に生む需要に対して、制度がどれだけ需要を膨らませているかを見る。薬局は日本薬剤師会の1997年の試算で必要数が2万4,000軒だったのに対し、現在は約6万2,000店。医薬分業制度という政策的誘導がなければ、この2.6倍の過剰供給は生まれていない。介護では、制度開始時に3.6兆円だった給付費が24年で約12兆円に膨張した。制度が需要を「発見」しているのか「創出」しているのかを見極めることが判定の核心になる。

市場での生存率

制度が消えたときに、その職域の中で自由市場で生計を立てられる人間が何割いるか。この判定の単位は業種ではなく職域、あるいは個人であることが重要だ。「介護は生活保護職か」という問いは不毛だが、「介護保険制度が消えたときに市場で食えない人間が何割いるか」には答えが出せる。

同じ業種の中に、市場原理でも存在しうる領域と、制度がなければ淘汰される領域が混在している。医療でいえば、救急や外科は制度がなくとも自由市場で価格がつく。一方で、漫然投薬で成り立つ一部の内科開業医や、処方箋の袋詰めで食っている調剤薬局は、保険制度がなければ存続できない。

継続性への寄与

その職域が消滅したとき、国家・生命・社会機能のいずれかの継続性が代替不能な形で損なわれるか。これは経済的な価値だけでは測れない。

漁業権制度はわかりやすい例だ。制度設計としては、世襲制で参入障壁を設け、国の海洋資源を使いながら公的補助を受け、水産資源の管理も不十分という問題を抱えている。しかし全国の沿岸部に漁村があり、人が物理的に存在しているということは、排他的経済水域の実効支配という安全保障上の機能を果たしている。人が住んでいない海岸線は、外国勢力に侵食されるリスクが高まる。制度はクソでも、消すと別の問題が出る。こういう職域は「廃止」ではなく「改革」の対象になる。

有害性の大きさ

生活保護職の深刻度を測る軸であり、以下の四つの要素で構成される。

  • 税金・社会保険料の投入額——規模が大きいほど、国民が不本意に奪われる資源が大きい
  • 市場の歪み——制度に守られた低品質の事業者が存在することで、自由市場で正当に競争している事業者が不利になる。介護保険の生活援助が1回200円で提供される限り、民間の家事代行業者は価格競争にならない
  • 制度の自己拡大圧力——制度に依存する人間が制度の維持拡大を求める側に回ること
  • 被福祉者精神の拡散——「もっと給料を上げろ」「もっと労働条件を改善しろ」と要求するが、その原資が市場での価値創造ではなく制度(公金)であるという精神性が、当たり前のものとして社会に広がること

有害性が大きいほど批判の対象としての優先度が高くなる。逆に、税金が使われていても有害性が小さいもの、国民が「まあいいんじゃないか」と思えるものは、言語化しにくい価値を含んでいる可能性が高い。


三分類——廃止・改革・維持

制度に依存する職域は、以下の三つに分類される。

生活保護職(廃止可能)

直接的な価値がなく、存在価値も代替可能であり、有害性を伴うもの。制度が消えれば市場または他の仕組みが機能を代替するか、そもそも誰も困らない。

制度寄生だが存在は必要(改革対象)

制度設計に問題があり有害性も認められるが、そこに人や機能が存在していること自体に代替困難な価値があるもの。廃止ではなく制度の再設計が必要。前述の漁業権がこれにあたる。

備えの費用(維持対象)

平時には生産性が見えにくいが、有事または長期的な観点から代替不能な機能を持ち、国民がその費用負担を受容しうるもの。自衛隊、災害復旧能力としての地方建設業者、国土保全機能を担う林業などが典型。


自己強化の循環——なぜ生活保護職は拡大し続けるのか

生活保護職は放置すれば拡大する。そこには構造的な自己強化の循環がある。

まず制度が生活保護職を作り出す。介護保険制度がケアマネジャーという職種を創出し、医薬分業制度が6万の調剤薬局を生んだように、制度設計そのものが雇用を生む装置として機能する。

次に生活保護職が被福祉者の精神性を育む。制度に守られた環境で働くうちに、市場で価値を提供して対価を得るという発想が弱まり、制度の設計者(国)に対して待遇改善を要求するという関係性が当たり前になる。

その精神性を持つ人間が制度の維持と拡大を求める。介護職員の待遇改善要求、薬剤師会のロビイング、教育関係者の予算拡大要求。これらは市場に対して価値を示した結果ではなく、制度の維持を前提とした要求である。

そして制度がさらに生活保護職を拡大する。公共選択論でいうレントシーキングと同じ構造で、制度から利益を得ている人間が制度を守り、守られた制度がさらに雇用を生む。

この循環の中で特に注目すべきは「制度が制度を回すための職種」の存在だ。医療事務はレセプト処理のために存在し、ケアマネジャーはケアプラン作成のために存在し、補助金事務職は補助金制度の運用のために存在する。制度本体の目的(医療・介護・農業)とは無関係に、制度の複雑さそのものが二次的な雇用を生み出している。これは制度の自己増殖であり、生活保護職が拡大し続ける最も根本的なメカニズムである。

📕 小さな政府論の基本書


医療——48兆円の88%が制度マネー

令和5年度の国民医療費48兆915億円。このうち患者が自分の意思で支払っている金額は全体のわずか12%にすぎず、残りの88%は保険料と公費、すなわち制度が仲介する資金である。20年前の31.5兆円から1.5倍に膨張した。

診療種類別では医科診療34.5兆円、薬局調剤8.5兆円、歯科診療3.3兆円。傷病分類では循環器系疾患(高血圧・糖尿病関連)だけで6.3兆円を占め、慢性疾患の漫然投薬が制度マネーの巨大な受け皿になっている。

米国では公的保険制度が限定的にもかかわらず、1人あたり医療費がOECD最高水準の巨大な医療市場が成立している。つまり医療という行為自体の市場需要は、制度がなくとも存在する。問題は「需要があるかどうか」ではなく「制度がどれだけ需要を水増ししているか」だ。

調剤薬局薬剤師——必要数の2.6倍、制度が作った6万店

薬局数は約6万2,000店でコンビニを上回る。日本薬剤師会が1997年に必要と試算した数は2万4,000軒であり、現状は2.6倍の過剰供給だ。医薬分業率は1990年代の約12%から約78%まで上昇し、この政策的誘導が薬局の爆発的増加を生んだ。届出薬剤師数は32万9,045人、うち薬局従事者は19万7,437人。調剤医療費は年間約8.5兆円で国民医療費の17.6%を占める。

医薬分業制度が廃止され院内処方に回帰した場合、約6万の調剤薬局の大半は存在意義を失う。処方箋応需が収入の9割以上を占めるためだ。米国では薬剤師がワクチン接種や共同薬物治療管理などの臨床業務を担うが、日本の薬剤師の多くは「処方箋を受け取って袋詰めする」業務モデルであり、自由市場での生存は困難。薬局勤務薬剤師の70〜80%、約14〜16万人分の雇用が消失すると推定される。薬の管理や相互作用チェックは必要だが、院内薬剤師やAIで代替可能であり、6万店体制は機能の維持に必要な規模ではない。

柔道整復師——不正請求と過剰供給

施術所数は5万919カ所、就業者数は7万8,827人。1998年の養成施設規制撤廃を契機に就業者は2.9万人から2.7倍に膨張した。柔道整復療養費はピーク時で約4,085億円、現在も3,400〜3,600億円と巨額だ。

会計検査院の調査では94施術所中62施術所で不適切請求が確認されており、架空請求・部位転がし・来院日数水増しが横行している。整形外科医の93.4%が柔整起因の症例悪化を経験しているとの調査もある。米国のカイロプラクター市場は保険適用が限定的にもかかわらず自由市場で成立しているが、日本の柔道整復師の大半は保険請求に完全依存しており、制度が消えた場合、施術所の70〜80%は廃業に追い込まれると推定する。整形外科や理学療法で代替可能であり、継続性への寄与は極めて低い。

医療事務——制度が制度を回す典型

全国約17万9千の医療機関で年間20億件以上のレセプトが処理されている。医療事務業務の推定60〜70%がレセプト関連であり、診療報酬制度に100%依存した業務だ。レセプトオンライン請求率は既に94%に達し、DX化が進んでも人的需要は急減する。制度が廃止された場合、推定30〜50万人規模の医療事務従事者の大半の業務が消滅する。自費診療の会計・受付業務は残るが、現在の1〜2割程度の規模になるだろう。

これは制度が制度を回すために存在する職種の典型だ。レセプト制度がなければ生まれなかった仕事であり、制度がなくなれば消える。継続性への寄与はゼロ。

健診産業——法的義務が作る1兆円市場

2024年度の市場規模は9,680億円労働安全衛生法に基づく定期健康診断と、高齢者医療確保法に基づく特定健診・特定保健指導が需要の根幹だ。法律で義務化されているから受ける。違反すれば罰金。法的義務がなくなった場合、市場の50〜70%が消失すると推定される。残るのは自発的に受ける人間ドックと、死亡率低下のエビデンスがあるがん検診。早期発見・予防医学の価値はあるが、現行の「全員一律」方式は費用対効果が低く、リスクベースの選別的健診に改革すべき対象だ。

歯科——過剰供給だが自費転換の余地あり

歯科診療所数は6万6,768カ所でコンビニを1万店以上上回る。保険診療が収入の78〜86%を占めるが、審美・インプラント・矯正を合わせた自費市場が既に8,000億円〜1兆円存在しており、制度が消えた場合に自費への転換が最も進みやすい医療職種でもある。保険制度がなくなれば高付加価値領域の歯科医(全体の20〜30%)は生存可能だが、保険点数の低い基本治療中心の開業医は大幅に淘汰され、歯科診療所の40〜50%は廃業に追い込まれると推定する。口腔健康は全身健康と密接に関連し、歯科医療そのものの社会的必要性は高いため、問題は過剰供給であり、改革対象に分類する。

診療科別の生存率——漫然投薬の内科から美容外科まで

内科開業医のうち、生活習慣病の漫然投薬で成り立っている層は保険制度なしでは存続困難だ。循環器系疾患だけで6.3兆円が制度を通じて流れている。精神科は保険依存率95%以上と推定され、通院精神療法中心の診療所は最も脆弱な部類に入る。一方、救急医療・外科・産科は生命に直結するため制度がなくとも市場で価格がつき、美容外科・レーシック眼科はほぼ100%自費で成立しており制度変更の影響を受けない。看護師は米国でも高需要であり、制度変更後も雇用の核は残る。

医療分野の一覧表

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職業・職域推定就業者数公費依存度市場生存率三分類
調剤薬局薬剤師19.7万人95%以上20〜30%生活保護職
柔道整復師(接骨院)7.9万人90%以上15〜25%生活保護職
医療事務(レセプト関連)30〜50万人60〜70%が制度依存10〜20%生活保護職
鍼灸師(保険適用分)13.4万人中〜高40〜50%改革対象
健診産業従事者市場規模約1兆円法的義務に90%依存30〜50%改革対象
歯科(保険診療中心)歯科医師約10万人78〜86%50〜60%改革対象
内科開業医(慢性疾患管理中心)数万人規模90%以上30〜40%改革対象
精神科(通院精神療法中心)95%以上20〜30%改革対象
救急・外科・産科医高いが需要は実需70〜90%維持対象
看護師136.3万人高い60〜80%維持対象
美容外科・レーシック眼科ほぼ0%100%(非該当)

介護・福祉——24年で3.3倍に膨張した16兆円市場

2000年の介護保険制度開始時、給付費は約3.6兆円だった。2024年度の費用額は11兆9,381億円と約3.3倍に膨張している。利用者の自己負担は原則1割で、残りは保険料と公費。要介護認定者数は256万人から749万人へと3倍になり、保険料月額は2,911円から6,225円超に倍増した。障害福祉サービスの総費用は年間約4.18兆円で、直近10年で予算額は約2倍に膨張している。介護と障害福祉を合わせた制度市場は約16兆円規模だ。

米国のナーシングホーム年間費用は9万〜11万ドルであり、入居者の60%が公的扶助に依存している。つまり米国でも結局公費が介護を支えており、「自由市場で介護が完全に成立する」という仮説は現実には機能していない。ただし、制度が需要をどれだけ水増ししているかは別の問題だ。

ケアマネジャー——制度が消えれば職種ごと消える

ケアマネジャーは介護保険制度のために創設された職種であり、制度がなくなれば職種自体が消滅する。資格登録者は累計約80万人だが、有効求人倍率は8.77倍と人手不足が深刻で、ケアプラン作成料は利用者自己負担ゼロ(全額保険給付)という歪んだ構造にある。

国際的にも日本のような独立国家資格としてのケアマネジャーは日本固有の制度設計だ。ドイツでは疾病金庫のケースワーカー、英国ではソーシャルワーカー、米国では看護師がケースマネジメント機能を担っている。高齢者の生活相談・サービス調整の需要自体は残るが、それは独立した資格職である必要はなく、ソーシャルワーカーや看護師、あるいはAIで代替可能だ。

生活援助ヘルパー——家事代行との価格差10〜20倍

訪問介護の生活援助は、1割負担で1回約200〜250円で利用できる。一方、民間の家事代行サービスは1時間2,000〜5,000円。価格差は10〜20倍だ。技術的には家事代行で完全に代替可能であり、介護保険の生活援助が存在する限り民間の家事代行市場は価格競争にならない。「制度が市場を殺している」典型例である。要支援者向けの生活援助は2015年に既に総合事業に移行済みであり、厚労省内でも軽度者の生活援助を保険給付から外す議論が継続中。重度者の身体介護とは明確に区別すべきだ。

放課後等デイサービス——12年で事業所数8倍

2012年の制度創設時約2,900カ所だった事業所が、2025年には2万2,748カ所に急増した。利用者数も5.4万人から約37.5万人へと7倍。利用料の9割以上が公費であり、179事業所が不正請求で行政処分を受けている。テレビやDVD視聴だけの「居場所型」事業所やフランチャイズ展開する営利事業者の参入が急増しており、「福祉」の名を借りた制度ビジネスの側面が強い。障害児の放課後の居場所としての社会的必要性はあるが、現行の質の管理なし・9割公費という体制は改革が急務だ。

就労継続支援A型・B型——福祉的就労という名の所得移転

A型事業所4,415カ所(利用者8.5万人)、B型事業所1万6,295カ所(利用者33.4万人)。B型の平均工賃月額は約2.3万円(旧方式)。給付費は合計約5,000億円規模。A型では生産活動収入から賃金を支払えず給付費から補填する事業所が存在し、一般就労への移行率は極めて低い。実態は「就労支援」の名目による制度的な所得移転であり、市場原理での成立は不可能だ。ただし、障害者の社会参加・居場所としての機能は代替困難であり、問題は効率性と一般就労への移行率にある。廃止ではなく制度設計の改革が必要。

福祉用具貸与——Amazonで買えるものに公費を使う

受給者数は295万人で居宅サービス中第2位、給付費は推定3,000億円規模。要介護2以下の軽度者が件数の約6割を占める。車いす、特殊寝台、歩行器等は一般のレンタル・小売市場でも入手可能であり、財務省の財政制度等審議会も軽度者への給付見直しを提言している。専門的フィッティングが必要な高度医療機器は別途対応すべきだが、軽度者向けの福祉用具貸与は一般市場で代替可能だ。

介護・福祉分野の一覧表

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職業・職域推定就業者数公費依存度市場生存率三分類
ケアマネジャー実働数万人100%0〜5%生活保護職
生活援助ヘルパー訪問介護の一部90%以上10〜20%生活保護職
福祉用具貸与事業者受給者295万人分90%20〜30%生活保護職
放課後等デイサービス2.3万事業所90%以上10〜15%改革対象
就労継続支援A型8.5万人利用95%以上5〜10%改革対象
就労継続支援B型33.4万人利用100%0〜5%改革対象
社会福祉士実働約24万人高い20〜30%改革対象
身体介護ヘルパー(重度者対応)212.6万人の一部高いが実需40〜60%維持対象
施設介護職員(特養・老健等)入所系103.6万人高い40〜50%維持対象

教育——少子化なのに大学は1.6倍に増えた

日本の公財政教育支出のGDP比は約2.9〜3.0%で、OECD平均の4.2〜4.3%を大幅に下回る。にもかかわらずPISAでは世界トップクラスの学力を維持しており、「低コスト・高パフォーマンス」構造にある。問題は支出の総量ではなく配分の非効率性だ。18歳人口が1991年の207万人から2024年の約110万人へ47%減少したにもかかわらず、大学数は1990年の507校から2024年の813校へ1.6倍に増加している。

定員割れ私立大学——全私大の6割が定員割れ

2024年度時点で定員割れの私立大学は354校(59.2%)と過去最悪を記録した。充足率70%未満の「募集停止予備軍」は96校、50%未満は29校にのぼる。私立大学等経常費補助金は年間約2,980億円で、累計交付額は13兆6,075億円に達する。

2024年の出生数は約68万人(過去最低)であり、この世代が受験を迎える2040年代には進学者数が現在から約3割減少する。米国では2010年以降160校以上の大学が閉校しており、日本でも淘汰は不可避だが、私学助成がその速度を鈍化させている。充足率50%未満の29校は教育機関としての機能を果たしておらず、補助金の延命装置を外せば即座に消滅する

大学教員と非常勤講師——18歳人口が半減する中で教員は57%増

大学本務教員数は1990年の約12.3万人から2024年の19万2,531人へ57%増加した。18歳人口が47%減少する中でのこの増加は、大学数の膨張に伴うものだ。非常勤講師の比率は51.6%に達し、私立大学では56.4%。平均年収は150〜200万円で、大学制度の存続に完全に依存している。

研究大学(旧帝大、早慶等)の教員は研究費獲得能力やブランドで生存可能だが、定員割れ大学の文系教員で研究業績が限定的な層は、大学が閉校すれば行き場がない。基礎科学・人文学の長期的な知的蓄積は国家の文化資本として代替不能だが、それは定員割れ大学で論文を書かない教員によって担われているわけではない。

教育委員会——7.4万人の制度維持装置

市町村・都道府県の教育委員会事務局の本務職員は合計約7万4,000人。業務の大半は法令に基づく学校管理・人事・予算執行であり、公教育制度そのものが業務の根拠だ。英国では2010年以降のアカデミー化で中等校の80%が転換し、地方教育当局の役割が大幅に縮小した先例がある。教育の質の監督は必要だが、現行の人員規模は制度の複雑さが生んだ過剰である可能性が高い。

スクールカウンセラーと特別支援教育——制度拡大が需要を創出

スクールカウンセラーは1995年の154校への試験配置から現在約3万件の配置に拡大したが、配置を増やしても不登校は減少せず増加しており、効果が実証されていない。特別支援教育を受ける児童生徒数は、義務教育段階の児童生徒数が1割減少する中で倍増した。2007年の特別支援教育の制度化と2004年の発達障害者支援法が診断・認定の拡大を後押しし、支援員の配置増がさらなる認定増を呼ぶという循環を生んでいる。特別支援学校の児童生徒1人あたり経費は普通学校の約10倍だ。ニーズ自体は実在するが、制度が需要を創出している側面がある。

教育分野の一覧表

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職業・職域推定就業者数公費依存度市場生存率三分類
定員割れ私大教員(充足率50%未満)29校分極めて高い5〜10%生活保護職
定員割れ私大教員(充足率50〜80%)約100校分高い20〜30%生活保護職
非常勤講師(複数校掛け持ち)推定数万人大学制度に完全依存10〜20%生活保護職
教育委員会事務局職員約7.4万人100%0〜5%改革対象
スクールカウンセラー約3万件配置100%10〜20%改革対象
特別支援教育支援員増加中100%10〜15%改革対象
研究大学の教員旧帝大等上位校60〜80%維持対象
小中学校教員約70万人100%維持対象
塾・予備校講師市場規模約1兆円0%60〜80%(非該当)

その他の分野——調査継続中の生活保護職候補

以下の分野は詳細な定量調査が未了であり、概観を示すにとどめる。データが揃い次第、個別に分析を追加する予定だ。

農林水産業

飼料用米の補助金依存農家は生活保護職の典型候補だ。飼料用米は市場需要がほぼゼロであり、水田活用直接支払交付金(約2,870億円)が100%の需要を創出している。減反政策の変形として補助金が需要を丸ごと作っている構造であり、主食用米で代替可能。JA共済事業も民間の生損保で完全に代替可能であり、農協法による特別な法的地位(保険業法の適用除外)がなければ存在理由は薄い。

一方、零細米農家は改革対象に分類される。補助金が経営を延命しているが、中山間地の農地・水田を維持する人間がいなくなると国土保全機能が毀損される。完全廃止ではなく、大規模化促進と中山間地限定の直接支払いへの再設計が筋だ。林業は維持対象に近い。国土の67%が森林である日本において、山林管理の放棄は土砂災害・水害リスクの不可逆的な増大を招く。沿岸漁業は制度設計に問題があるが、沿岸部に人が物理的に存在していること自体に安全保障上の機能がある。廃止ではなく漁業権制度の改革が必要。

建設・公共事業

需要がない地域での道路や箱物の建設が、実質的に雇用維持を目的とした公共事業として存在している地域がある。ただし地方の建設業者は災害復旧の即応能力を担っており、この機能は代替困難。全体を生活保護職とは言えないが、「雇用維持のための公共事業」部分は改革対象だ。

行政・公務員

外郭団体・第三セクター・独立行政法人は天下り先としての機能を持つものが含まれる。補助金の審査・配分に関わる職員は「制度が制度を回すための雇用」の典型であり、制度が簡素化されれば自動的に消える。

士業・資格職

行政書士の許認可申請代行業務は規制が仕事を作っている。社会保険労務士は社会保険制度の複雑さが、税理士は税制の複雑さが仕事を生み出している。制度が簡素化されれば大幅に縮小する。補助金コンサルタントは補助金制度の存在そのものが仕事の根拠であり、制度がなければ消える。

高齢者雇用

シルバー人材センターは制度設計として福祉そのものだ。高年齢者雇用安定法による継続雇用制度の義務化で、企業に生産性に見合わない雇用が強制されている側面がある。

エネルギー

FIT制度(固定価格買取制度)で成立している再生可能エネルギー事業者は、買取保証がなくなれば採算割れになる事業体を多数含む。制度が「再エネ市場」を作り出している構造だ。

文化・メディア

NHKは受信料制度による強制的な需要創出で成り立っている。国民が「見たい」から払っているのではなく、法律で義務化されているから払っている。公費で維持されている文化施設・芸術団体にも、入場料収入だけでは成立しない組織が含まれる。


構造の問題——社会主義的手法が作り出す雇用

生活保護職は個々人の怠慢の問題ではなく、制度設計の構造的帰結だ。

抽象度を上げれば、生活保護職とは「社会主義的手法によって水増しされた雇用」のことだ。ただしここで言う「社会主義」は国家体制の話ではない。資本主義国である日本の中に、市場原理ではなく行政が需要と供給と価格を決定する領域が存在しており、その領域が自己拡大しているという構造を指している。

国民医療費の88%が制度マネーであり、介護給付費の90%が公費と保険料であり、定員割れ大学が私学助成で延命されている。これらの領域では、制度が需要を作り、需要が雇用を作り、雇用された人間が制度を守る。自由市場での価値提供と対価の交換という資本主義の基本原理が機能していない。

重要なのは、「同じ業種の中に、市場原理でも存在しうる領域と、市場原理になったら淘汰される領域がある」ということだ。介護そのものを否定しているのではない。救急医療を否定しているのでもない。制度によって水増しされた部分と、そこにぶら下がっている人間を指している。


この記事の立場と留意事項

この記事は自由主義者の立場から、社会主義的制度を批判する目的で書かれている。データは公的統計・海外比較研究から客観的に収集したが、それを「生活保護職」として評価する行為には立場がある。異なる立場からは異なる評価が成り立ちうる。

いくつか留意事項を明記しておく。

業種丸ごとの否定ではない。 繰り返しになるが、判定の単位は業種ではなく職域だ。「介護は生活保護職」「医療は生活保護職」とは言っていない。同じ業種の中に、市場で生きられる人間と淘汰される人間がいる。

個人への人格攻撃ではない。 生活保護職に就いている個人が悪いのではなく、その構造を作り出し維持している制度設計が問題だ。ただし、その構造を望み維持しているのは被福祉者精神を持つ人間であり、構造と人間は切り離せない。

後半の分野は調査継続中。 医療・介護福祉・教育は定量データに基づく分析だが、農林水産業以降の分野は概観にとどめている。データが揃い次第、更新する。

「廃止可能」は政策提言ではない。 明日制度を廃止しろと言っているのではない。制度がなくなった場合に何が起きるかという思考実験を通じて、現在の制度構造を可視化することが目的だ。


主要データ出典

#生活保護職 #社会保障 #減税 #小さな政府 #自由主義 #医療費 #介護保険 #制度改革

税金・手取りの可視化ツール

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