トラックボールマウスへの乗り換えを検討中の方が最も不安に感じるのは「慣れるまでどのくらいかかるのか」「親指が疲れるのでは」「トラックパッドとどっちがいいのか」といった点でしょう。
長年MacBookのトラックパッドと通常マウスを使用してきた筆者が、ロジクールM575への乗り換えを実行し、1年以上使用した結果をお伝えします。
慣れるまでの期間は想像以上に短く、マウスパッドが不要になる利便性や手首・肩への負担軽減効果を実感できました。一方で、親指の疲労や細かい操作の難しさといったデメリットも存在します。
この記事では、トラックボールマウスの購入を迷っている方が「買って後悔した」とならないよう、実際の使用感を包み隠さずレビューし、乗り換えの判断材料となる情報をお届けします。

トラックボールマウスとトラックパッドはどっちがいい?基本的な違い
操作方法の違い
トラックボールマウスは親指でボールを転がしてカーソルを動かします。一方、トラックパッドは人差し指や中指でパッド面をなぞる操作が基本です。
トラックボールの操作感は、実はトラックパッドに近いものがあります。どちらも指先だけでチョイチョイと操作でき、手首や腕を大きく動かす必要がありません。普通のマウスのように本体を動かす必要がないため、立った状態やベッドで寝ながらでも操作可能です。
ただし、トラックボールは親指での操作が必要になるため、PC操作で親指をあまり使ったことがない人は最初戸惑うかもしれません。普段のマウス操作は手首や腕、トラックパッドは人差し指や中指が中心だからです。
疲労軽減効果の比較
項目 | トラックボールマウス | トラックパッド |
---|---|---|
手首への負担 | ◎ 動かさないため軽減 | ○ 比較的軽減 |
肩こり対策 | ◎ 腕を持ち上げる力が不要 | ○ 軽減効果あり |
親指への負担 | △ 集中的に使用 | ◎ 負担なし |
腕の内旋 | ○ 緩い角度で楽 | ◎ 自然な角度 |
トラックボールマウスの疲労軽減効果は主に手首と肩に現れます。普通のマウスでは、マウスを動かすために腕を常に少し持ち上げた状態を維持する必要がありますが、トラックボールならこの力みが完全になくなります。
ひろゆき氏も「肩こりが嫌ならトラックボール使えば?」と発言しているように、長時間のPC作業による肩こり対策として効果的です。
ただし、親指に負担が集中するため、手首の腱鞘炎の代わりに親指の腱鞘炎になる可能性があることは理解しておく必要があります。
使用環境による向き不向き
デスク作業では、どちらも優秀ですが、スペースの制約がある場合はトラックボールが有利です。マウスパッドも不要で、周りに物があっても気になりません。
カフェなどの狭いテーブルでは、トラックボールマウスが圧倒的に便利です。普通のマウスだと動かすスペースが足りなくてイライラすることがありますが、トラックボールなら本体サイズ分のスペースさえあれば十分です。
ベッドや離れた場所からの操作では、両方とも可能ですが、トラックボールの方が画面との位置関係を気にせず操作できます。普通のマウスは画面を正面に見た状態でないと、マウスの動きとカーソルの方向がわからなくなりがちです。
細かい作業が多い場合は、トラックパッドの方が有利かもしれません。トラックボールはボールがグリングリンと動いてしまい、細かい位置調整が難しい場合があります。
トラックボールマウスに慣れるまでの期間と効果的な練習方法
慣れるまでにかかる実際の期間
基本操作への慣れは10〜20分程度で可能です。「トラックボールは慣れるまで1週間かかる」と言われますが、実際はそこまで時間はかかりません。
習熟度の向上は約1週間が目安になります。最初の10〜20分で普通に使えるようになり、そこから1週間かけて操作の精度や速度が向上していくイメージです。
ただし、これは親指を意図したように動かす慣れも含まれています。PC操作で親指を使う機会は「押す」操作くらいしかなかったため、繊細なカーソル操作を親指で行うこと自体が新しい体験になります。
慣れない原因と解決策
主な慣れない原因:
- ボタン配置の記憶書き換えが必要
- 親指での操作経験不足
- 従来のマウス操作の無意識レベルの習慣
具体的な解決策:
ボタン配置の混乱については、最初のうちは「この操作をしたい時はこの筋肉をこう動かす」という無意識の感覚で、乗り換え前のマウスに該当する指をピクっと動かしてしまいます。これは意識的に新しい配置を覚え直すことで1〜2日で解決します。
親指操作の不慣れは、普段使わない筋肉を使うため仕方のないことです。無理をせず、疲れたら休憩を取りながら徐々に慣らしていくのが重要です。
慣れるための具体的なステップ
Step1:基本的なカーソル移動をマスター まずは画面の四隅にカーソルを移動させる練習から始めます。親指でボールを転がす感覚を掴むことが最優先です。
Step2:クリック操作との組み合わせ カーソル移動に慣れたら、クリック操作を組み合わせます。ファイルを開く、リンクをクリックするなど、日常的な操作を繰り返し練習します。
Step3:細かい操作の練習 テキスト選択や細かいボタンクリックなど、精密な操作に挑戦します。この段階で操作の精度が大きく向上します。
慣れを早める使い方のコツ:
- 最初はゆっくりとした動作を心がける
- 親指だけでなく手のひら全体でマウスを支える
- 疲れを感じたら無理をせず休憩を取る
トラックボールマウスで親指が疲れる?腱鞘炎のリスクと対策
親指疲れが起こる理由
親指への負荷集中がトラックボールマウスの最大のデメリットです。従来のマウスでは手首や腕全体で負荷を分散していましたが、トラックボールではすべてのカーソル操作を親指だけで行うため、集中的な負荷がかかります。
普段使わない筋肉の酷使も疲れの原因です。PC操作において親指は「スペースキーを押す」程度の役割しかなく、繊細で連続的な動作には慣れていない筋肉です。
長時間の連続使用により、手首の腱鞘炎と同様に親指の腱鞘炎を発症するリスクがあります。これは「手首が痛くならない代わりに親指が痛くなる」という、負荷の移転とも言えます。
腱鞘炎を防ぐ使い方のコツ
定期的な休憩は必須です。1時間に10分程度の休憩を取り、親指を休ませることが重要です。連続使用時間が長いほど腱鞘炎のリスクが高まります。
正しい持ち方を意識しましょう。親指だけに力を入れるのではなく、手のひら全体でマウスを支え、親指はボールに軽く触れる程度の力加減が理想的です。
操作の使い分けも効果的です。細かい作業が続く場合はトラックパッドや普通のマウスに一時的に切り替えることで、親指への負荷を軽減できます。
ストレッチの実施として、作業の合間に親指や手首のストレッチを行うことで、筋肉の緊張をほぐし腱鞘炎を予防できます。
疲れにくいトラックボールの選び方
サイズ選択では、手の大きさに合ったサイズを選ぶことが重要です。小さすぎると指が窮屈になり、大きすぎると操作しにくくなります。
ボールの大きさと重さも疲労に直結します。大きめのボールの方が少ない動きで大きくカーソルを動かせるため、親指への負担が軽減されます。
エルゴノミクス設計のモデルを選ぶと、手の自然な角度で操作でき疲労軽減につながります。手のひらがしっかりと乗せられる形状のものがおすすめです。
ボタンの配置と押し心地も重要な要素です。よく使うボタンが無理な体勢で押さなくて済む位置にあるかを確認しましょう。硬すぎるボタンは指への負担を増やします。
トラックボールマウスのメリット|マウスパッドいらずで省スペース
マウスパッドが不要になる理由
トラックボールマウスはマウス本体を動かさないため、マウスパッドが一切必要ありません。通常のマウスは光やレーザーの反射でカーソルの動きを感知しますが、トラックボールは親指でボールを回転させることでカーソルを操作します。
どんな表面でも安定して動作するのが最大の特徴です。ツルツルのテーブルやガラステーブルなど、通常のマウスでは反応が悪くなる環境でも、トラックボールなら問題なく使用できます。デスク面やマウスパッドとの相性を気にする必要がなく、どこでも一定の操作感を維持できます。
デスクスペースの有効活用
マウスを動かすスペースが一切不要になることで、デスク上の限られたスペースを有効活用できます。通常のマウスでは縦横20cm程度のスペースが必要ですが、トラックボールなら本体サイズ分だけで十分です。
散らかりがちなデスクでも快適に作業できる利点があります:
- ボールペンや飲み物が邪魔になることがない
- 書類や資料を広げたままでも操作可能
- カフェの狭いテーブルでも問題なく使用可能
省スペース性は特に狭い作業環境で威力を発揮し、ストレスフリーな作業環境を実現できます。
場所を選ばない操作性
トラックボールマウスはどんな環境でも安定した操作が可能です。通常のマウスでは難しい環境でも快適に使用できる場面が多数あります。
場所を選ばない理由:
- ベッドや布団の上でも親指の操作だけで使用可能
- 膝の上でノートPCを使用する際も安定して操作
- 離れた場所からでも画面が見えれば正確にカーソル操作可能
通常のマウスは本体を動かす方向と画面の向きが一致していないと使いにくくなりますが、トラックボールは画面さえ見えていれば直感的に操作できるのが大きなメリットです。
手首・肩への負担軽減効果
手首の腱鞘炎対策として医療関係者にも推奨されることが多いトラックボールマウス。手首を動かさずに操作できるため、長時間のPC作業による負担を大幅に軽減できます。
肩こり軽減効果も期待できます。通常のマウスを動かす際は、腕を持ち上げて動かすために常に筋肉を使っている状態ですが、トラックボールなら親指の操作だけで済むため、腕や肩の疲労が蓄積しにくくなります。
また、腕の内旋(内側への捻り)が緩いのも特徴です。通常のマウスでは手のひらを下に向けるために腕を強く内旋させますが、トラックボールでは内旋の度合いが少なく、より自然な腕の位置で操作できます。
トラックボールマウスのデメリットと注意点
細かい操作の難しさ
精密な作業が苦手なのがトラックボールマウスの最大のデメリットです。親指でボールを回すという操作の性質上、ピクセル単位での細かな調整が困難になることがあります。
細かい操作で困る場面:
- 画像編集での精密な選択範囲指定
- CADソフトでの正確な線描画
- 小さなボタンへの正確なクリック
ただし、細かい操作が必要な場面ではトラックパッドとの併用や、ペンタブレットの使用で解決できるため、完全に使えないわけではありません。日常的なWeb閲覧や文書作成では問題になることはほとんどありません。
本体サイズの大きさ
通常のマウスより本体が大きいのは避けられないデメリットです。トラックボール機構を内蔵するため、どうしても本体サイズが大型化してしまいます。
サイズによる影響:
- 持ち運び時にカバンのスペースを多く占有
- 手の小さい人には操作しづらい場合がある
- デスク上での存在感が大きくなる
一方で、大きいからこそ手のひら全体を乗せられて楽という側面もあります。手のひらのサポート感は通常のマウスより優れており、長時間使用時の快適性につながります。
価格面での考慮点
高品質なトラックボールマウスは価格が高めに設定されています。通常のマウスと比べて機構が複雑なため、同等品質のものでも価格差が生じやすくなります。
マウスタイプ | 価格帯 | 特徴 |
---|---|---|
通常マウス | 1,000-3,000円 | エントリーモデルが豊富 |
トラックボール | 3,000-8,000円 | 高品質モデルが中心 |
初期投資は高くなりますが、耐久性や健康面での長期メリットを考慮すると、コストパフォーマンスは決して悪くありません。特に腱鞘炎などの予防効果を考えれば、医療費の節約にもつながる可能性があります。
【実体験レビュー】ロジクール M575を1年使った感想
乗り換え直後の使用感
通常マウスからトラックボールへの移行は、想像していたより遥かにスムーズでした。乗り換え前は「慣れるまで1週間は覚悟しよう」と思っていましたが、実際は10~20分程度で普通に操作できるように。
ただし、完全に違和感がなくなるまでには以下の調整期間が必要でした:
初期の慣れない要因:
- ボタン配置の記憶書き換え:無意識レベルで染み付いた指の動きを修正
- 親指操作の不慣れ:PC操作で親指を細かく動かす経験が少ない
- 力加減の調整:ボールを回す際の適切な力の感覚
特に「親指でマウスカーソルを動かす」という操作は、今まで手首や腕で行っていた動作とは根本的に違うため、親指の筋肉の使い方を覚える時間が必要でした。
慣れてからの操作性の変化
1週間後には違和感が完全に消失し、むしろ通常マウスより快適に感じるようになりました。特に以下の変化を実感:
操作性の向上ポイント:
- 腕と肩の疲労軽減:マウスを動かすために腕を浮かせる必要がない
- 手首の負担ゼロ:手首を動かさないため腱鞘炎のリスクが大幅減少
- 精密な操作が可能:慣れると細かい調整も問題なく行える
また、手のひらの向きが自然になったことで、長時間作業での疲労感が明らかに減少。通常マウスでは手のひらを完全に下向きにするため腕が内旋しますが、トラックボールではより自然な角度で手を置けるのが快適です。
トラックパッドとの使い分け
MacBookのトラックパッドとトラックボールマウスの併用が最も効率的でした。両者の使い分けは以下の通り:
作業内容 | 使用デバイス | 理由 |
---|---|---|
長時間の作業 | トラックボール | 疲労軽減効果が高い |
細かいデザイン作業 | トラックパッド | ジェスチャー操作が便利 |
移動中の作業 | トラックパッド | 携帯性重視 |
トラックボールの操作感はトラックパッドに近いというのが1年使った実感です。指先だけでチョイチョイと操作できる感覚が似ており、トラックパッド好きな人ほどトラックボールにも馴染みやすいでしょう。
ひろゆき氏の評価について
ひろゆき氏が「肩こりが嫌ならトラックボール使えば?」と発言していることで話題になりましたが、これは実際に使ってみると理にかなっています。
通常マウスでは、マウスを動かすために常に腕を少し浮かせた状態を維持する必要があります。この微細な筋力の持続が、長時間作業での肩こりの一因となっているのは確実です。
トラックボールなら腕を完全にデスクに置いた状態で操作できるため、肩周りの筋肉への負担が大幅に軽減されます。1年間使用した結果、確実に肩こりの頻度が減少しました。
まとめ|トラックボールマウスは思ったより早く慣れる
トラックボールマウスへの乗り換えは、予想以上に簡単というのが1年使用した正直な感想です。
乗り換えを迷っている人への結論:
- 慣れるまでの期間:10-20分で基本操作、1週間で完全習得
- 健康効果:肩こり・手首の負担が確実に軽減
- 利便性:省スペース・場所を選ばない操作が快適
「トラックボール最高!」というより「普通に違和感なく使えて、むしろ楽で便利」というのが率直な評価です。購入前は「慣れなかったらどうしよう」と不安でしたが、その心配は完全に杞憂でした。
親指が疲れるという心配も、適切な力加減を覚えれば問題ありません。むしろ手首や肩の負担軽減効果の方が遥かに大きく、長時間のPC作業が格段に楽になります。
迷っている人は思い切って乗り換えてしまっても後悔しないレベルの完成度です。
