アドレスホッパーとは?定住せず転々とする生活を実現する方法と必要な仕事・費用を解説

アドレスホッパーとは、定住する家を持たずに住所(アドレス)を転々と変えて生活する人のことです。ホテルを転々とする生活や、ゲストハウス、マンスリーマンションなどを渡り歩きながら働く新しいライフスタイルとして注目されています。

リモートワークの普及により、場所に縛られない働き方が可能になった現代。Webエンジニアやライター、デザイナーといった職種を中心に、アドレスホッパーという生き方を選択する人が増えています。

しかし、アドレスホッパーになるにはどのような仕事が適しているのか月々の生活費はどのくらいかかるのか住民票や荷物の管理はどうするのかなど、実際に始める前に知っておくべきことが数多くあります。

この記事では、アドレスホッパーの基本的な概念から、具体的な職種例月額費用のシミュレーション利用できるサービス、そしてメリット・デメリットまで、アドレスホッパーになるために必要な情報を詳しく解説します。

ADDressなどの多拠点生活サービスの登場により、以前と比べてアドレスホッパー生活は始めやすくなっています。一方で、OYO LIFEのようにサービス終了する例もあり、最新の情報を把握することが重要です。

アドレスホッパーという生き方に興味がある方、実際に始めることを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

目次

アドレスホッパーとは何か

アドレスホッパーの基本概念

アドレスホッパーとは、定住する家を持たずに住所(アドレス)を転々と変えて生活する人、またその生活スタイルのことです。「アドレス(住所)」を「ホッピング(転々とする)」という意味から生まれた造語で、特定の場所に縛られない自由な暮らし方として注目を集めています。

アドレスホッパーは最低限の荷物だけを持ち、数日から数週間、場合によっては数ヶ月単位でホテルやゲストハウス、シェアハウスなどを転々としながら生活します。従来の「出張でホテルに泊まる」というスタイルとは異なり、転々とする生活自体が日常となっているのが特徴です。

この生活スタイルが注目される背景には、以下の社会変化があります:

  • リモートワークの普及により場所を選ばず働けるようになった
  • 働き方改革で多様なライフスタイルが受け入れられるようになった
  • 価値観の多様化で物質的豊かさより体験を重視する人が増えた

ホテル暮らしとアドレスホッパーの違い

ホテル暮らし」と「アドレスホッパー」は似ているように見えますが、実は明確な違いがあります。両者の関係性を整理すると以下のようになります:

生活スタイル定住場所との関係滞在の性質
ホテル暮らし定住場所があり、一定期間ホテル住まい定住場所が主、ホテルが従
アドレスホッパー転々とするのが通常の生活転々とすることが主体

ホテル暮らしは、本来の住まいがありながら仕事や学習の都合で一時的にホテルに滞在することを指します。一方、アドレスホッパーは転々とすること自体が生活の基本形で、特定の「帰る家」を持たないのが大きな違いです。

アドレスホッパーにとって「その時その時で住みたいところに住む」ことが可能になり、冬は暖かい地域、夏は涼しい場所といった季節に応じた移動や、仕事の都合に合わせた柔軟な拠点変更ができるのが魅力となっています。

ミニマリストやデジタルノマドとの関係性

アドレスホッパーと類似する概念として、ミニマリストデジタルノマドがありますが、それぞれ異なる側面に焦点を当てています。

ミニマリストとの関係:

  • 共通点:少ない荷物で生活する点
  • 相違点:ミニマリストは「物を持たない思想」、アドレスホッパーは「場所に縛られない生活スタイル」

デジタルノマドとの関係:

  • 共通点:場所を選ばず働ける点
  • 相違点:デジタルノマドは「働く場所の自由」、アドレスホッパーは「住む場所の自由」

実際には、これらの要素を組み合わせた人も多く存在します。**物を最小限に抑え(ミニマリスト)、デジタル技術を活用して場所を選ばず働き(デジタルノマド)、住む場所を転々とする(アドレスホッパー)**という複合的なライフスタイルを実践する人が増えています。

特にリモートワークができるIT関係者や、オンラインで完結する仕事に従事する人にとって、これらの生活スタイルは非常に親和性が高く、新しい働き方・生き方の選択肢として定着しつつあります。

おはbizアドレスホッパー
https://www3.nhk.or.jp/news/contents/ohabiz/2019_0311.html

アドレスホッパーに適した仕事と収入源

アドレスホッパーになるための大前提は、場所に縛られない仕事を持つことです。特定の場所に通う必要がある仕事では、アドレスホッパーライフスタイルは実現できません。

リモートワーク可能な職種

アドレスホッパーに最も適している職種は、パソコンとインターネット環境があれば完結する仕事です。実際のアドレスホッパーに多い職種をご紹介します。

Webエンジニア・プログラマー

システム設計から開発、テストまで幅広く対応できる職種です。一度受注すれば、基本的には仕事を完成させて納品するまでクライアントとの接触は最小限で済みます。必要に応じてオンライン会議でやりとりしますが、基本的には好きな場所で仕事ができるのが大きな魅力です。

案件相場は月額30万円~100万円程度と幅広く、スキルレベルによって大きく異なります。

Webデザイナー

ウェブサイトのデザインやUI/UXデザインを手がける仕事です。見栄えが重要な仕事のため、画面を使った説明が中心となり、アドレスホッパーでも何の差し支えもありません

案件相場は月額20万円~60万円程度で、継続案件を獲得できれば安定した収入につながります。

Webライター・ブロガー

文章作成が主な業務のため、パソコンやスマートフォンがあればどこでも仕事ができます。ブログ運営の場合は広告やアフィリエイト収入が主な収入源となります。

ただし、紙媒体のライターは取材が発生することがあり、アドレスホッパーでは対応しにくい可能性があります。Webライターの場合、文字単価1円~10円程度が相場です。

Webマーケター・SEOコンサルタント

SEOコンサルティングやSNSマーケティングなど、自分の知識や経験を活かして働く仕事です。基本的には仕事場所の拘束がなく、クライアント先への出向が必要な案件を避ければアドレスホッパーとして働けます。

月額相場は30万円~80万円程度で、専門性が高いほど高単価を期待できます。

フリーランスと会社員の働き方

アドレスホッパーには、フリーランスと会社員の両方が存在します。以前はフリーランスの割合が高かったものの、コロナ以降のリモートワーク普及により、完全リモートワークが可能な会社員のアドレスホッパーが約4割まで増加しています。

フリーランスのアドレスホッパー

完全に場所と時間の自由度が高い反面、収入の安定化が課題となります。複数のクライアントとの継続契約や、定期的な収入源の確保が重要です。

会社員のアドレスホッパー

株式会社ニットのような完全リモートワーク企業に所属するケースが増えています。安定した収入がある一方で、会社の方針変更により出社が求められるリスクもあります。転職時にはリモートワーク継続の保証を確認することが重要です。

収入目安と安定した仕事の見つけ方

アドレスホッパー生活を継続するには、月額20万円以上の安定収入が目安となります。宿泊費だけで月12万円~24万円かかるため、それ以外の生活費も含めると最低でもこの程度の収入が必要です。

収入を安定させるポイント:

  • 継続案件の獲得:単発案件よりも月額制や長期契約の案件を優先する
  • 複数収入源の確保:一つのクライアントに依存しない収入構造を作る
  • スキルアップの継続:需要の高いスキルを身につけて単価を上げる
  • 人脈の活用:同じアドレスホッパーとの情報交換で仕事の紹介を受ける

仕事の見つけ方としては、クラウドソーシングサイトやフリーランス向けエージェント、SNSでの営業活動が一般的です。特に、アドレスホッパー同士のコミュニティでは仕事の情報交換も活発に行われています。

ただし、月収が20万円以下の場合、一般的な賃貸住宅の方が費用を抑えられる可能性が高いため、収入面での準備は十分に行ってからアドレスホッパーライフを始めることをおすすめします。

アドレスホッパーの住まいと滞在先

アドレスホッパーが利用する住まいは、短期契約が可能な宿泊施設が中心となります。通常の賃貸のような2年契約や敷金・礼金は不要で、日単位から月単位での利用が可能な施設を選択することが重要です。

利用可能な宿泊施設の種類

ホテル・ビジネスホテル

最もプライバシーが確保できる選択肢で、1泊4,000〜6,000円程度が相場です。月額にすると12万〜18万円となり、水道光熱費やWi-Fi、清掃サービスが含まれているのが特徴です。

ビジネスホテルの特徴:

  • 完全個室でプライベート空間が確保される
  • デスクとチェアがあり仕事環境が整っている
  • 毎日の清掃とタオル交換で衛生的
  • フロントでの郵便物受け取りが可能

ただし、インバウンド需要の影響で2024年現在は価格が上昇傾向にあり、予約も取りづらくなっているのが現状です。

ゲストハウス・ホステル

コストを抑えたいアドレスホッパーに人気の選択肢で、1泊2,000〜4,000円程度で利用できます。ドミトリー(相部屋)が一般的ですが、個室もあります。

ゲストハウスの魅力:

  • 宿泊費を大幅に抑えられる
  • 多様な旅行者や同じアドレスホッパーとの交流
  • 地域の情報収集が容易

一方で、プライバシーが限定的で、仕事に集中したい場合には不向きな場合もあります。

マンスリーマンション・ウィークリーマンション

月額15万円前後で、家具・家電付きの部屋を借りられます。ホテルよりもやや安く、一定期間同じ場所に滞在したい場合に適しています。

マンスリーマンションのメリット:

  • キッチンがあり自炊で食費を節約可能
  • 洗濯機があり洗濯費用が不要
  • 広めの空間で長期滞在に適している

シェアハウス・コリビング

数ヶ月単位での契約が基本となるため、短期移動の多いアドレスホッパーには制約がありますが、一定期間の滞在が決まっている場合はコスト面で魅力的です。個室があり、キッチンやリビングは共用となります。

アドレスホッパー向けサブスクサービス

近年、アドレスホッパーの増加に合わせて定額制の住み放題サービスが登場しています。これらのサービスを活用することで、従来よりも格安でアドレスホッパー生活を実現できます。

ADDress

月額9,800円から利用可能で、全国約300拠点の施設に滞在できる代表的なサービスです。

プラン月額料金利用可能泊数
2泊プラン9,800円2泊分のチケット
5泊プラン19,800円5泊分のチケット
30泊プラン99,800円30泊分のチケット

ADDressの特徴:

  • 戸建て、古民家、ホテルなど多様な拠点
  • 光熱費・Wi-Fi・家具家電完備
  • 住民票が置ける専用ベッドオプションあり
  • 同伴者1名まで無料

HafH(ハフ)

国内外のホテルやホステルに定額で泊まれるサービスで、月10泊プランが32,000円程度から利用できます。ホテルグレードにより必要コイン数が異なる仕組みです。

Hostel life

平日プランで月額20,000円程度から利用でき、主にホステルでの滞在となります。コストパフォーマンスに優れ、他の旅行者との交流を重視する人に適しています。

TsugiTsugi(東急運営)

東急グループが運営する宿泊サブスクで、全国300施設以上で利用可能です。利用しなかった泊数は翌月に繰り越せる(まいにちプランを除く)ため、柔軟な利用ができます。

サービス終了したOYO LIFEについて

元記事で紹介されていたOYO LIFE(オヨライフ)は2021年6月に事業売却により日本市場から事実上撤退しました。

OYO LIFEは「スマホひとつで30分で入居できる」をコンセプトに、敷金・礼金不要のマンション・アパート賃貸サービスを提供していましたが、以下の要因により事業継続が困難となりました。

OYO LIFE撤退の背景:

  • 不動産オーナーとの契約条件の問題
  • 日本の不動産業界慣行への適応困難
  • 高い運営コストと採算性の課題

現在、同様のコンセプトのサービスを探している場合は、上記で紹介したADDressやその他のサブスクサービスが代替選択肢となります。

現在アドレスホッパーを始める際は、OYO LIFEのような単発サービスではなく、安定して運営されているADDressなどの実績あるサービスを選択することが重要です。

アドレスホッパーの生活費と費用シミュレーション

アドレスホッパーの 最大の関心事は生活費 です。定住しない生活にどれくらいの費用がかかるのか、具体的な数字を交えて詳しく解説します。

宿泊費の相場

アドレスホッパーの 宿泊費は滞在先の選択によって大きく変動 します。以下が現在の相場です。

滞在先タイプ月額費用(目安)特徴
ビジネスホテル12万~24万円個室・清掃サービス付き
サブスクサービス1万~10万円ADDress等、拠点限定
ウィークリーマンション15万~20万円家具家電付き、中長期向け
ゲストハウス・ホステル8万~15万円共用部あり、交流重視

ビジネスホテルの詳細費用

最も一般的な選択肢 であるビジネスホテルの場合:

  • 1泊5,000円×30日 = 月額15万円
  • 1泊4,000円×30日 = 月額12万円(地方・平日中心)
  • 1泊8,000円×30日 = 月額24万円(都心・繁忙期)

インバウンド需要の影響 により、2024年現在は従来より 2~3割程度費用が上昇 している傾向にあります。

サブスクサービスの活用

ADDress をはじめとするサブスクサービスを利用すれば、コストを大幅に削減できます:

料金体系の例(ADDress):

  • 2泊プラン:月額9,800円
  • 30泊プラン:月額99,800円
  • 約300拠点で利用可能

その他の生活費

宿泊費以外の 必要経費 も把握しておく必要があります。

食費

アドレスホッパーの食費は 外食中心 となるため、通常の一人暮らしより高めです:

  • 平均的な食費:月額6万~9万円
  • 1日2,000~3,000円の計算
  • 朝食サブスク利用で月額3,000円程度の節約も可能

交通費・雑費

移動生活に伴う諸費用:

  • 移動交通費:月額2万~5万円(移動頻度による)
  • 洗濯代:月額1,200円~2,000円(コインランドリー週3回利用)
  • 荷物保管料:月額5,000円~1万円(トランクルーム利用時)

賃貸住宅との費用比較

1ヶ月の総費用比較表

項目アドレスホッパー賃貸一人暮らし
住居費12万~24万円7万~12万円
初期費用なし30万~50万円
光熱費込み1万~2万円
家具家電不要10万~30万円
食費6万~9万円3万~5万円
月額合計18万~33万円11万~19万円

長期的な視点 では、賃貸の方が安くなりますが、初期費用や引越し費用を考慮 すると、短中期間ならアドレスホッパーの方が有利な場合もあります。

節約のコツと費用を抑える方法

アドレスホッパーの 費用削減テクニック をご紹介します。

宿泊費の節約術

効果的な節約方法:

  • サブスクサービスの活用:ADDressなら1泊3,000円程度で利用可能
  • 長期割引の活用:同じホテルでの連泊で10~20%割引
  • 平日・オフシーズンの活用:土日より平日が30~50%安い

変動費のコントロール

宿泊費を変動費にできる のがアドレスホッパーの大きなメリットです:

  • 収入が多い月:高級ホテルや観光地
  • 節約したい月:ゲストハウスや地方都市
  • 仕事に集中したい期間:コワーキング併設施設

実用的な節約テクニック

具体的な節約方法:

  • キッチン付き宿泊先 を選んで自炊
  • 朝食付きプラン で食費を一定化
  • 複数サービスの使い分け で最適な選択肢を確保
  • 荷物の最小化 で移動コストを削減

年間300万円程度の予算 があれば、十分に快適なアドレスホッパー生活が可能です。ただし、安定した収入源の確保 が前提となるため、仕事面での準備も重要になります。

アドレスホッパーのメリット

自由度の高いライフスタイル

アドレスホッパーの最大の魅力は、好きな時に好きな場所に住める自由度です。通常の賃貸生活では、仕事や用事で他の地域に滞在する際も「一度自宅に戻る」必要がありますが、アドレスホッパーなら直接目的地に移動できます。

季節や気分に合わせた住み替えも可能で、「冬は暖かい九州で過ごす」「桜の季節は京都に滞在する」といった生活が実現できます。旅行のように期間を制限される必要もなく、満足するまでその土地で暮らし続けられるのです。

出張が多いビジネスパーソンにとっては、移動のたびに荷造りをする手間が省け、出張先から直接次の目的地に向かえるフットワークの軽さは大きなメリットといえるでしょう。

固定費の削減可能性

賃貸住宅では避けられない固定費の多くが、アドレスホッパーでは不要になります。

アドレスホッパーで削減できる費用:

  • 敷金・礼金・仲介手数料(賃貸の初期費用)
  • 家具・家電の購入費用
  • 水道光熱費(宿泊費に含まれるため)
  • 引っ越し代
  • 家具・家電の処分費用

滞在先によっては、東京で賃貸物件を借りるよりも月額費用を安く抑えることも可能です。特にADDressなどのサブスクサービスを活用すれば、月額9,800円からアドレスホッパー生活を始められます。

また、アドレスホッパーでは宿泊費を変動費にできるのも特徴です。収入に応じて安い宿泊施設を選んだり、ボーナス時期に高級ホテルで過ごしたりと、その時の経済状況に合わせた調整が可能です。

多様な体験と人脈形成

各地を移動する生活では、その土地ならではの文化や体験に触れる機会が格段に増えます。地方の伝統行事に参加したり、その地域でしか味わえない食文化を楽しんだりと、定住では得られない豊かな経験を積めます。

ゲストハウスやシェアハウスを利用することで、同じくアドレスホッパーとして活動する人や地域住民との交流も生まれます。こうした出会いから新しい仕事の機会や価値観を得られる可能性もあり、人脈の幅が大きく広がります。

移住を検討している方にとっては、お試し移住の手段としても活用できます。実際にその土地で生活してみることで、移住後の生活をより具体的にイメージできるでしょう。

フットワークの軽さ

アドレスホッパーは常に身軽な状態を維持しているため、急な予定変更や新しい機会にも素早く対応できます。「明日から別の都市で仕事をしたい」「突然面白いイベントがあるから参加したい」といった時でも、すぐに行動に移せるのです。

荷物が最小限であることで、掃除や整理整頓の時間も大幅に削減できます。また、宿泊施設のクリーニングサービスを利用することで、洗濯や部屋の清掃といった日常的な家事からも解放されます。

アドレスホッパーのデメリットと注意点

住民票と住所の問題

アドレスホッパーが直面する最大の課題の一つが、住民票と住所の管理です。日本の制度上、どこかに住所を置く必要があり、完全に無拠点で生活することは現実的ではありません。

実家への住民票登録

最も一般的な解決策は実家に住民票を置く方法です。実家がある方は、両親の理解を得た上で住民票をそのまま残しておくケースが多く見られます。税金や各種手続きも実家の住所で行うことになります。

シェアオフィス・私書箱の活用

実家が利用できない場合は、住所利用可能なシェアオフィスバーチャルオフィスを契約する方法があります。法人登記にも使える住所を月額数千円から利用でき、郵便物の受け取りや転送サービスも提供されています。

私書箱サービスも有効な選択肢で、郵便物の内容をメールで確認し、必要なもののみ転送してもらうことが可能です。

郵便物の受け取り方法

アドレスホッパーの郵便物受け取り方法:

  • 宿泊先での受け取り(ホテル名+フロント気付で指定)
  • コンビニ受け取り(宅配便の場合)
  • 郵便局留め(一時的な滞在先の場合)

重要な書類は事前にWeb化しておき、紙の郵便物を最小限に抑える工夫も必要です。

荷物の保管と管理

持ち物を最小限に抑えることがアドレスホッパー成功の鍵ですが、それでもすべての荷物を常に持ち運ぶことは困難です。

季節物の衣類やスポーツ用品、書籍など、一時的に不要な荷物の保管場所を確保する必要があります。実家を利用できない場合は、トランクルームやレンタル倉庫を契約することになり、月額数千円から数万円の費用がかかります。

また、スーツケース一つ分の荷物で生活するという制約は、買い物や持ち物の選択において常に意識する必要があり、慣れるまでは窮屈に感じる可能性があります。

体力的・精神的な負担

数週間から数ヶ月ごとの移動を繰り返すアドレスホッパー生活は、想像以上に体力を消耗します。新しい環境に適応するストレス、移動による疲労、睡眠環境の変化などが積み重なり、体調を崩しやすくなる傾向があります。

常に新しい環境に慣れる必要があるため、安定した日常を求める方には向いていません。WiFi環境や騒音レベル、室温調整など、仕事に集中できる環境を毎回確保する手間もかかります。

精神的にも、一定の場所に根を下ろしたい欲求が強い方にとっては、継続的な移動生活がストレスとなる場合があります。

宿泊先探しの手間

アドレスホッパーは常に次の滞在先を探し続ける必要があります。特に観光シーズンやイベント開催時期は宿泊施設の予約が取りづらく、希望する地域に滞在できない可能性もあります。

インバウンド観光の影響で、2024年現在は特に都市部での宿泊費が高騰しており、以前より宿泊先の確保が困難になっています。事前の予約計画や複数の候補地を用意しておく必要があるでしょう。

また、リモートワークに適した環境(デスク、椅子、安定したWiFi)を備えた宿泊施設を見つけることも、毎回の課題となります。

一人でないと困難な現実

アドレスホッパーの生活は基本的に単身者向けのライフスタイルです。家族がいる場合、子どもの学校や配偶者の仕事の都合で実現は極めて困難になります。

ペットを飼っている方にとっても、ペット可の宿泊施設は限られており、移動のたびにペット用品を運ぶ負担も大きくなります。ペット同伴でのアドレスホッパー生活は現実的とはいえません。

また、恋人やパートナーとの関係維持も課題となる場合があります。ADDressなどのサービスでは同伴者も利用できますが、相手の理解と協力が不可欠です。長期的な関係を築きたい場合は、アドレスホッパー生活との両立について慎重に検討する必要があるでしょう。

アドレスホッパーになるための準備

必要な準備期間と手順

アドレスホッパーになるには、最低でも6ヶ月から2年程度の準備期間が必要です。実際にアドレスホッパー生活を1年以上続けている人の多くは、2年間の準備期間を設けて段階的に移行しています。

準備の基本手順:

  • Phase1(6ヶ月前):仕事の安定化と収入確保
  • Phase2(3ヶ月前):荷物の断捨離と住所問題の解決
  • Phase3(1ヶ月前):実際の移動の練習と最終調整

重要なのは「今すぐ家を出て行けと言われて30分後に出ていける状態」を作ることです。これができれば、アドレスホッパー生活の基本条件はクリアしたといえます。

荷物の断捨離方法

アドレスホッパーはスーツケース1個とリュック1個程度に荷物をまとめる必要があります。持ち運べる荷物量に制限があるため、徹底的な断捨離が必須です。

断捨離の優先順位:

優先度アイテム対処法
仕事道具(PC、充電器など)必ず持参
基本衣類(3-4日分)厳選して持参
季節物・趣味用品実家・レンタル倉庫に保管

具体的な荷物管理のコツ:

現地調達できるものは持たない方針で、シャンプーや歯ブラシなどの消耗品は移動先で購入します。服は3-4日分のみを持参し、コインランドリーで定期的に洗濯する生活スタイルに慣れることが重要です。

スノーボードやゴルフ用品などの大型趣味用品は実家やレンタル倉庫に保管し、必要な時期のみ取りに行く仕組みを作りましょう。

仕事の安定化

アドレスホッパーになるには、場所に依存しない安定した収入源が必要不可欠です。月20万円以下の収入では生活が厳しいため、まず収入の安定化を図りましょう。

アドレスホッパーに適した職種:

  • Webエンジニア・プログラマー:システム開発、アプリ開発
  • Webデザイナー:サイトデザイン、UI/UXデザイン
  • Webライター・ブロガー:記事執筆、コンテンツ制作
  • Webマーケター:SEOコンサル、SNS運用

これらの職種はパソコンとネット環境があれば完結するため、アドレスホッパーとの相性が良好です。フリーランスだけでなく、フルリモート勤務の会社員も増えており、選択肢は広がっています。

収入目安:月25万円以上あれば、ビジネスホテル中心の生活でも余裕を持てます。ADDressなどのサブスクサービスを活用すれば、月15万円程度でも十分に生活可能です。

拠点となる住所の確保

アドレスホッパーは定住しませんが、法的な住所登録は必須です。住民票や各種契約、郵便物受け取りのために固定住所が必要になります。

住所確保の選択肢:

  • 実家の住所を利用(最も一般的)
  • シェアオフィスの住所利用
  • バーチャルオフィスサービス

実家の住所を使用する場合、税金の支払いや重要書類の管理を家族に依頼することになります。事前に家族の理解と協力を得ておくことが重要です。

郵便物管理のコツ:

クレジットカードや銀行の明細書はWeb明細に切り替え、必要最小限の郵便物のみ実家に送付されるよう設定します。私書箱サービスを利用すれば、郵便物の内容をメールで確認してから「廃棄・転送・店舗受け取り」を選択できます。

アドレスホッパーの実例と体験談

実際のアドレスホッパーの1日

ADDressを利用するアドレスホッパーの典型的な1日:

時間活動内容
7:00起床、軽朝食(コンビニパンまたは宿泊先提供)
8:00-12:00午前の作業(リモートワーク)
12:00-13:00昼食、近所散策
13:00-18:00午後の作業、オンライン会議
18:00-20:00夕食、他の利用者との交流
20:00-22:00自由時間、翌日の移動準備

仕事環境の確保:

多くのアドレスホッパーは、宿泊先にデスクと椅子がある個室を重視します。ADDressの拠点では、利用者からの要望を受けて作業環境が整備されており、Wi-Fi環境も完備されています。

集中して作業したい時は個室で、気分転換したい時は共有スペースやコワーキングスペースを活用するなど、環境を使い分けることで生産性を維持しています。

移動パターンと滞在期間

一般的な滞在パターン:

  • 短期滞在型:2-7日で移動(観光・体験重視)
  • 中期滞在型:2週間-1ヶ月(仕事集中・地域密着)
  • 長期滞在型:1-3ヶ月(深い地域体験・関係構築)

実際のアドレスホッパーの移動例では、月10箇所以上を転々とする人もいれば、気に入った場所に1-2ヶ月滞在する人もいて、個人の仕事スタイルや目的によって大きく異なります。

移動の決め方:

移動先は仕事の都合気候・季節同じサービス利用者との交流などを総合的に考慮して決定します。「今月は寒いから九州に滞在」「仕事で東京近郊が必要だから神奈川へ」といった柔軟な判断が可能です。

利用サービスの使い分け

主要サービスの使い分け例:

サービス月額料金適用場面
ADDress9,800円~地域密着、長期滞在
HafH32,000円~ホテル重視、快適性優先
ビジネスホテル直接予約12-24万円仕事集中、短期利用

コスト重視の場合:

月の予算が限られている時はADDressの安価なプランを中心に利用し、大事なプレゼンや会議がある時のみビジネスホテルを使うといった使い分けが効果的です。

体験重視の場合:

様々な宿泊体験を求める場合は、HafHで高級ホテルADDressで古民家ホステルで国際交流など、目的に応じてサービスを使い分けることで、多様な体験を得られます。

実際の利用者は2-3つのサービスを同時契約し、その時の仕事の状況や気分、予算に応じて最適な選択肢を選んでいるケースが多く見られます。

まとめ

アドレスホッパーは定住せずに各地を転々としながら働く新しいライフスタイルとして注目されている。実現には月収25万円以上の安定した収入場所に依存しない仕事が必要不可欠だが、ADDressなどのサブスクサービス(月額9,800円~)の登場により以前より始めやすくなった。

費用はビジネスホテル中心で月15-25万円サブスクサービス活用で月10-15万円程度が目安。賃貸住宅と比較すると初期費用は抑えられるが、長期的には割高になることが多い。

主な課題は住民票や郵便物の管理荷物の保管場所確保体力的・精神的負担など。実家の協力やシェアオフィス、私書箱サービスの活用で解決可能だが、事前の準備が重要。

OYO LIFEの撤退事例が示すように、アドレスホッパー向けサービスは変動があるため最新情報の確認が必要。独身でWeb系スキルを持ち、新しい環境への適応力がある人に向いているライフスタイルといえる。

アドレスホッパーは「今すぐ家を出て行ける状態」を作ることから始まる。興味がある方は、まず週末の短期滞在でサブスクサービスを試してみることをおすすめしたい。


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